「もしもこんな匂いがあったら」

とある展覧会に参加することになりました。
展覧会のタイトルを訳すと、「もしもこんな匂いがあったら」でしょうか。
世にも珍しい、匂いだけの展覧会。
3月にニューヨークで、4月にイギリス北部 Sunderland という街のギャラリーで開かれます。

展示者は15人くらいらしいのですが、
それぞれキュレーターが考えたいくつかのエピソードや設定からひとつテーマを選んで、匂いを作っていきます。
ほぼ全員、パフューマーかサイエンティスト。
きっと「アーティスト」なんて怪しげな看板掲げてるのは、私だけだと思います。

アートのコンテキストにおける、匂いの展覧会。
こんな理想的なコンテキストで展示できるなんて、実はすごく光栄なんですが、正直ビビっています。
周りは「その道」で何十年も仕事をしておられる、れっきとしたプロフェッショナル。
匂いの作品作りを始めてたかだか1年か2年、
「その道」の学校に通ったのも2週間足らず、
しかも自宅の台所や風呂場を使って実験してるわけで、
香料会社の香料や器具がずらっと並んだ研究室とは規模も内容もわけが違います。

展覧会の technical requirement を理解するのがやっとなのです。
空間のサイズとか、電源とかインターネットの接続とか、プロジェクターの位置とか、そんなことをやりとりするのは朝飯前なのですが、この展覧会では
「Benzyl Benzoate に溶解、8オンス」とかそんな感じなんです。
Benzyl Benzoate? なんじゃそりゃ? てかんじです。
さぞやキュレーターもハラハラしているのではないかと思われます(笑)

で、私がどんなテーマを選んだかというと、
「旧東独の国家警察がスパイ特定のために人民の匂いを瓶詰めした」というエピソード。
実際に、ベルリンのある博物館でこの瓶を見ることができます。
(匂いを嗅ぐことはできません。)

もともと体臭の抽出などを実験した経験もあるのでこれを選びました。
体臭のリアリズム表現をするだけでなく、それを超えて、想像に働きかけるような抽象的な領域に踏み込むことができれば・・・というところが目標でしょうか。

目標は理想だけど、現状はほど遠いです。
限られた時間の中で、どれだけ実験が成功するかどうか。
実験のためには自分で汗をかいて体臭を出さねばなりません。
毎日ヨガして、汗かいて、抽出して・・・を繰り返せど繰り返せど、足りません。
おかげで痩せる一方で、めでたいことに出産前の体重を切りました。(笑)

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