perfumum ステージを終えて・・・ 薫香・香りの小道具メモ



感無量、とはこのことで。その日は仕事モードだったのだけど、一夜明けると気持ちのよい疲労感、そして感動がこみ上げてきて、ひとり成田への道のりで涙が出て来てしまいました・・・笑。今はオランダにいます。

ふだん、時間を戻して欲しいと思う事はあまりないのですが、いまばかりは思います。あの時に、あの空間に、戻して欲しい、と。もういちど体験したい、と。でもこんどはお客さんとして・・・(笑)

ルハニのダンス・シスターたち。ノーラさん。素晴らしいものを見せてくださいました。特にノーラさんの、最後の最後まで厳しくベストなものを追求する姿には共感させられますし、これからもどんどんディレクターとして飛躍していただきたいです。ともすれば趣味やエンターテイメントの世界に籠りがちなベリーダンスを、「アート」に昇華させるノーラさんの試みは、貴重な仕事です。

距離は離れていても、いつも繋がっています。みんながいつも、私の心のソウルメイトとして、支えてくれています。どうもありがとう... Love ya all!


■はじめのごあいさつ(ステージの最初に述べた言葉です)


嗅覚アーティストとしてご紹介いただきました。嗅覚のアートというのは、絵筆や絵の具の代わりに香りを、キャンバスのかわりに空間を使う表現のことです。わたしはヨーロッパを中心に展示活動をしています。ヨーロッパでは流行し始めているフィールドですが、日本ではまだみなさん聞き慣れないかと思います。今回、嗅覚アートの一部をここでみなさんに体験していただくことができて、嬉しく思ってます。

単なるBGM的にアロマを流すというよりは、香りを媒体として、時間と空間を超えた体験をしていただくように構成されています。

まもなくこの空間が、香りの海と化すわけですが、ダンサーの方々には、ひと呼吸ひと呼吸、香りを吸い込んで味わっていただきたい。そしてみなさんには、その息吹を感じていただきたい。香りがダンサーとみなさんを繋ぐ。一体化する。そんな役割を担います。

まずステージを構成するときに、古代の香りの儀式からヒントを得ました。香りを神に捧げるといった行為は、世界各地で見られます。同じように、踊りもまた、古来より神々に捧げられるものとして発展してきました。これは、人類に共通する普遍的な「心情」というか、「心」の表れかもしれません。その「心」といったものを、ベリーダンスというアートを通して再現、そして表現していくようなステージを、ノーラさんと共に作り上げました。

ステージのひとつには、みなさんの中から限定3名でステージに上がって実際に濃密な体験をしていただく場面があります。ダンサーがみなさんお誘いに行きますので、心の準備をお願いしますね。みなさんと一緒に作って行くステージと私は考えています。

最後に、ダンサーそしてスタッフ一同、みなさまとこの空間このひと時を共有できますことを、とても嬉しく思い、感謝しております。どうもありがとうございます。





■薫香の裏舞台

今回の会場「月見る」での薫香は、リハの時間が実質30分! ほとんど全てがぶっつけ本番。なのでまず事前に、空調の位置の確認と、通風口の位置、スモークの流れの目視から空間特性を把握しました。お客さんがフルに入った状態で、奥の方や上まで香りが届くだろうか・・・といった懸念はありましたので、扇風機の強度は「最強」の設定にしました。

読めなかったのは換気のパワーです。足りなかったら、香りの微細な変化を描くことができません。そのため、上演直前の決断でしたが、ステージ上のエアコンもONのままにすることにし(それまではOFFにしてくれと頼んでたのです)、ライティングとスモークの組み合わせで生じる「質量のある空気に包まれている感」といった視覚的効果を利用するためにスモークもたいてもらうことにし(それまでは、スモークは香りを邪魔するから焚かないでくれと頼んでいたのです)、そのかわり香料もマックスに投入して焚くことにしました。

この最後の決断が功を奏しました。

会場側もヒヤヒヤするほどの、予想以上の客の入り。2階の後ろの方はおそらく、ほとんどステージが見えなかったかと思うのですが、それでも「香りは届いた」という声を聞きました。作家仲間からも、「香りの切り替えがハッキリとわかった。混ざってしまうかと思っていたら・・・」とのコメント。

「香りがあると、その世界に入って行きやすい」「異次元にトリップした」そんな声もたくさん聞きました。

薫香は私ふくめスタッフ3人でやりました。タイミングを合わせる事が重要なので、綿密な打ち合わせをした上で。ゆきさん、まさこさん、にわか仕込みだったのに、ふたりとも完璧にやってくださいました。彼女たち無しには成功しなかったこと。

ダンサー達も、リハの時よりずっとずっとスゴかった! 香りをむさぼるように楽しんでくれるお客さんを見て、ノリノリにテンション上がったとも聞きました(笑)

客席を見渡すと、明るかったんです。光量の問題ではなくね。みんな、優しい顔をしていて、優しい光に包まれていたんです。会場側も「通常なら閉塞感や不快感が生まれるはずの人数が入ってたのに、それが全くなく、むしろ心地よかったのは、香りのおかげでしょう。」とおっしゃってくださった。

香りは、みんなを元気にするんです。やわらかい光で包むんです。幸せにするんです。私自身も、始まる前は疲労感で手足も冷たかったのに、ステージが終わるころにはポカポカ。元気をもらい、浄化されました。まあ、高価な香料を大量に焚いたので、ほんとに贅沢な空間だったんですよね。

常に火加減に集中しなければいけなかったので、ほとんど踊りを楽しむ間は無かったのですが、あっという間に7つのステージが終わってしまいました。最後の花魁になったとき、「あれ?! これが、もう最後???」みたいな感じで・・・

でも花魁に紙吹雪を撒いたとき、会場の気から、感動がクライマックスに達したのを感じました。ダンサーが回転し、その紙吹雪もまた舞うところが儚くて、きわめて冷静な状態なのに、目が潤むという、不思議な状態でした。そして最後の菩薩様による浄化・・・ステージの仕事は、楽しい。またやりたいです。


■薫香メモ(香りのスタッフ用)

(1)クレオパトラ
1: ダンサーが動き始めたときに薫香開始。 煙もくもく出しても良い。
2: クレオパトラが出て来るときに、薫香ストップ。シャボン玉の準備。
3: クレオパトラが転がって顔を出し始めるときに、シャボン玉開始。ファン(弱)
4: シャボン玉やりながら、次のステージのための火をコントロール、パレットを準備、曲が始まった瞬間にステージに鉢を置けるようにしておく。

(2)月と三位一体
1: 薫香材料のアルミ皿のせて鉢を舞台裾に置く。 煙もくもく出しても良い。

(3)ハーレム
1: シャルロッテがソロで踊り始めたときに、薫香開始。煙もくもく出しても良い。
2: お客さんを入れるアナウンスが入る前に↑の薫香ストップ。

-- 休憩、炭の入れ替え --

(4)うずめの舞
1: 榊を振るのが落ち着き、座って器を置いたときに薫香開始。 煙モクモクは避ける。

(5)インディアン
1: Saoさん登場前からタバコの薫香開始 煙モクモクは避ける
2: ホーミーのときからセージの薫香開始
3: SaoさんのソロのときにPalo Santo に火をつける。消えたらまたつける。

(6)インド
1: Latteさんのソロ始まるときに白檀薫香開始。煙モクモクは避ける

(7)花街

1: 3人が踊り始める頃に、沈香を焚く 樹脂がぶくぶくいってほんのり香りが出るくらい
2: ファンヴェールの後、曲調が変わったときに、紙吹雪を手づかみ3回くらい華やかに散らす。
3: ノーラさんソロの時に、焼香を焚く。沈香に上乗せでOK.
4: ノーラさんソロの時は、上からパラパラとはかなげに紙吹雪を散らし続ける。扇で扇いでなるべくステージの方にも廻るように・・・(できるかな?! もし足りなかったら裾からも少しずつだけファン(弱)に載せてパラパラと散らす。)

■香りの小道具memo

(1)クレオパトラ
バラの香りのシャボン玉をクレオパトラ登場のシーンで飛ばします。オリジナルな方法で、香り付きのシャボン玉液を作りました。割れると、バラの香りがします。

(2)月と三位一体
なし

(3)ハーレム
フェザーファン/フェザーには、ローズ系の香りをしたためています。官能的な香り。お付きの者がずっと客席に向かってふわふわと扇ぎます。
踊り子が使っていたヴェールには、Hini Attarの香水をしたためまています。目隠ししたお客さんに舞台の上で体験してもらうときには、ロータスの香りをしたためたロータスを嗅がせてもらったり、ローズウォーターをピシャっとかけてもらったり。


(4)うずめの舞
榊には、月桃の香水(月桃煮出し液+樟脳+セージ)をスプレー。その上で、聖水式のように、手水をお客さんにピシャっとかけてもらいます。

(5)インディアン
パイプ:タバコの葉

(6)インド
川に見立てたヴェールには、ジャスミン系の香水をしたためます。サラスヴァティのラッテさんにも特別にジャスミンの香水を作り、全身に。

(7)花街
ファン・ヴェールには、「花魁の好んだ化粧品の香りの」香水をしたためます。
紙吹雪には、桜の香りをしたためます。

*香水は、Hini Attar 以外すべてオリジナルの調香。




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