2018/05/24

嗅覚のための迷路 ver.4


外務省の機関、ジャパン・ハウス・サンパウロの依頼により、来週からサンパウロに行って来ます。展示&講演してきます。

展示するのは新作「嗅覚のための迷路 ver.4」。「お花見」がテーマです。日本人はお花見が大好きです。4月にはいちばん立派な桜の木の下で宴を催し、酒を飲みます。桜は夜にこそ、ほのかに匂います。真っ暗な闇で、その ほのかな香りをたどって桜の木にたどり着けるかどうか、、、そんな迷路を再現しました。

匂い物質とその強度の関係について、Weber-Fechnerの法則が知られています。 匂いの強度をI匂い物質の濃度を Cとすると

I = a log C

で表すことができるというものです。この場合、は各香料固有の定数です。匂いの強度を2倍に するためには、香料の濃度を10倍にしなければいけないことを表しています。また逆に、匂い物 質を90%除去しても、匂い強度は半分にしかならないことも同時に示しています。この法則を今 回の迷路に応用しました。

この迷路には、3本の見えない桜の木があります。匂いの強い方向に進めば、きっと見つかります。

場所:ジャパンハウス サンパウロ (Paulista St, Sao Paulo)
オープニング:2018年6月5日 展示はその後3ヶ月続きます。
講演会: 2018年6月6日



とあるインタビューQ&A

Q: もともと香りに対して敏感でしたか?それとも、その敏感さや感覚は誰でも作り上げる事が可能だと思いますか?

A: もともと好きでした。子供のころにポプリを作るのが趣味だったので。ただ、敏感さとはまた違うかもしれません。私の母は匂いを仕事とはしていませんが、私よりよっぽど匂いに敏感で神経質です。過敏ともいえるくらい。母の場合はそういう生まれながらの性質なのかもしれません。

私の場合は、好きであり、興味がある(悪臭であっても)ので、理解も深まり、敏感になっていったのかもしれません。きっと興味があれば誰でもそうなっていくと思います。

Q: いつ、そして何がきっかけで香りへの興味がわきましたか?

A: 幼少の頃にも興味があったのですが、アートの手段として取り組み始めたのは2004年の妊娠・出産がきっかけでした。ホルモンのせいだと思うのですが、ゴミ箱の匂いが気になってしょうがなくて、部屋の隅に隠すのですが、それでも気になって、とうとう外に出してしまったことがあります。そして生まれたばかりの息子とのコミュニケーションも、嗅覚だけでない本能的な感覚によるもので、おどろきました。それがおもしろかったんです。

Q: 上田さんの活動をおこなっている中で、いつ、それがアートにもなると思い始めましたか?最初の頃、上田さんの行う活動は何と呼ばれていましたか?

A: 私はもともと大学で、マクルーハンに影響を受けた学問(環境情報学)を学んでおり、卒業後もメディア・アートやインタラクティブ・アートをやっていたので、匂いもアート表現のひとつの「メディウム」として捉えるというのは、ごく当たり前のことでした。なので、最初から、次の時代のアートとして意識的に取り組みました。記念すべき1作目は、様々なお茶やコーヒーの匂いを蒸留で抽出して「MENU FOR THE NOSE」という作品を作りました。

当時は olfactory art という言葉は一般的ではなく、自分の活動を表現する言葉を自分で考えました。最初はscent art あるいは smell art など簡単でわかりやすい表現を使っていましたが、そのうち私が興味あるのは匂いではなく嗅覚であることがわかってきて、 olfactory artist というふうに自己紹介するようになりました。(その時に、gmailのアカウントで、 olfactoryart というユーザー名を取りました)

じつは当時、メディア・アートの世界ではMITの周辺ですでに haptic art が成立していたので、その延長で olfactory art という言葉が思い浮かんだのです。私が突然メディア・アートから抜けて、電気を使わない超アナログな嗅覚アートをやりはじめたのに周囲は驚いていましたが、私には当時から、このアートフォームが現在のように発展するビジョンが描けていました。なので、冒険する価値はあると思ったのです。

Q:「香り」は新しいメディアだと仰っていますが、技術の発展と様々な問題を抱えている今の世の中、香りはどのような重要性があると思いますか?

A: いま生きることをあらためて考えさせてくれるものだと思います。私たちは、息をしながら、生きています。そのたびに実は匂い分子を取り込み、嗅いでいる。それだけ生きることにつながる、本能的な感覚です。大事なものは何かを見失った時、よい匂いを嗅ぐといいのかもしれません。嗅覚に意識的になることは、健康にも良い影響をもたらすはずです。

Q: 人々は忙しい生活を送っているため、4つの感覚に気付かず過ごすことがあると思いますか?これは人の記憶に影響を及ぼすと思いますか?

A: 記憶どころか、生きていることの豊かさを忘れてしまうのではないでしょうか。いまこの瞬間、そこで嗅いでいる香りは、その時の、あなただけのものです。もう2度と追体験することはできないし、他の人が同じ体験することもできません。そんな貴重な機会を逃しながら生きる人生って、もったいないですよね!

Q: 国民によって、香りに対して敏感だったり鈍感だったりしますか?

A: 嗅覚の国民性に関しては、生まれ育った日本はとくにユニークだと思います。1000年以上も昔から、日本人は香と詩歌のマッチングゲームのような遊びを嗜んでいました。それがのちに香道へと発展します。匂い・香りは分子であり物質なのに、それを日本人は現象として捉え、想像の世界で抽象的に遊びます。

一方で、西洋では匂い・香りはもっと物質的です。「生物のシグナル」的な捉え方をします。匂いが染みついたハンカチを渡して異性を誘ったり、香水をフェロモン的に使ったり。病気の原因は悪臭であるというふうに捉えられていた時代もあり、病気に打ち勝つために匂いが使われてきた歴史もあります。

日本人としてのバックグラウンドは確実に私の作品に反映されていると思います。














2018/04/07

「嗅覚のゲーム」がファイナリストに選ばれました!

2009年より教えてきた授業「嗅覚のゲーム」が、第5回Art and Olfaction Awards のSadakichi Award 部門にてファイナリストに選ばれました。



photo: Lucia Guglielmetti

今回は自分の作品はあえて応募せず、授業を応募。正直、単なる授業が賞を取るなんてことは想定してませんでしたので、私からのステートメント、あるいはアンチテーゼとして応募しました。ですので、審査員の英断に感謝するやらビックリするやらです。

「アンチテーゼ」というのは、嗅覚アート界へ持っている疑問です。昨今、なんのコンセプトもなしに、ただ単に匂いを作品化するだけの快楽的な作品のなんと多いことか...。テーマも都市の匂いや体臭、記憶や情緒に訴えるものが目立ちます。それも悪くはないのですが、嗅覚は極めて個人的な感覚なので、クリティックも曖昧になりますよね。まあそれがまさに作家の狙うところなのですが、つまり嗅覚アートの美学がまだ確立されていないのです(そんな状況でのアワードというのも、つまり危険性を孕みます)。ひねくれている私は、学生に「上記のようなのものは作らないように」指示します。そのかわり、香道のように、匂いを記号化して遊ぶインタラクティブな作品を考えてもらいます。それが「嗅覚のゲーム」です。匂いは本質的にneutralなのであるから、ゲームの中で匂いを置き換えても、コンセプトは変わらないものを作るように、と指導します。簡単に匂いのするオブジェみたいなのを作って終わらせたい学生には、厳しい要求ですが...

このアンチテーゼは、嗅覚アート界をリードするひとりとして、そして欧米中心に進みがちなその構造に対して、常に提示してきました。とはいえ、盛り上りムードの嗅覚アート界にメスを入れるのは私以外にあまりおらず...そういう意味ではずっと孤独でしたが、こうしてきちんと認めてくださる方々がいたということ、そして生徒が育ってきたということで、ようやく自信が湧いてきました。思えば節々で様々な示唆をくれたじぶんの師、藤幡正樹氏(欧米でメディアアートを牽引してきた作家)の存在も欠かせなかったと思います。

この授業は世界初の体系的な嗅覚アート授業としてスタートしました。(つい最近まで、「世界唯一の」でした)伝統的な王立大学において、東洋の、しかも女性が教えることも当時は画期的でした。設立当初から信じてくれ、支えてくれたオランダ王立美術大学ArtScience学部の同僚たちに感謝しています。ほんとうに素晴らしいフロンティアスピリットの集まる学部に場所をいただき、光栄以上の何ものでもないです。

4月21日に授賞式があり、学生たちがロンドンまで祝福しに来てくれるのが、何よりの、最高のご褒美です。プレイベント Experimental Scent Summit でも一緒にプレゼンをやります。




Olfactory Games 
Maki Ueda started her olfactory art course Smell and Art in 2009 at the ArtScience Interfaculty. In the course students learn a conceptual and abstract approach to the medium of smell. The use of smell goes beyond the representational use and focuses on its qualities and experience without a need for a narrative or context. The students are challenged to develop olfactory games using this approach. Furthermore, they learn chemical skills by extracting and composing smells to support their creations. The game format challenges our imagination: while we always have limited fragrance materials, we never stop thinking of new games. The Japanese traditional olfactory game Kodo is a good example of this.

Maki Ueda is an olfactory artist who explores olfaction with an abstract and conceptual approach. She was the World Technology Awards finalist in 2009 (category: art), and the Art and Olfaction Awards finalist in 2016 (Sadakichi Award). She is a guest teacher at ArtScience Interfaculty of the Royal Academy of Art and Royal Conservatoire, The Hague, The Netherlands. Maki Ueda is currently based in Okinawa, Japan. www.ueda.nl

Course conception: Maki Ueda

Participating studentsJune Yu, Lauren Jetty Howells-Green, Kay Churcher, Sophia Bulgakova, Ana Oosting, Abel Fazekas, Ilia Lukovnikov, Vera Khvaleva, Sunna Svavarsdottir, Mischa Lind, Stefano Zucchini, Georgia Kosmatou, Koen de Groot, Tudor Ulrich, Anni Nops, ...and all the students participating in the past courses.

Course given at: ArtScience Interfaculty of the Royal Academy of Art and Royal Conservatoire, The Hague, The Netherlands


Release from Art and Olfaction Awards:


FOR IMMEDIATE RELEASE

April 5, 2018

MILAN— We are pleased to announce the nominees for the 2018 Art and Olfaction Awards, which we made public in a special press event at Esxence, in Milan, on April 5, 2018. 

Awarded to just four perfumes, one experimental scent project and two special awards — the Aftel Award and the Contribution to Scent Culture — a year, The Art and Olfaction Awards are designed to raise public interest and awareness around new developments in independent perfumery. The Awards, established in 2014 by the Institute for Art and Olfaction, are given to outstanding creators in the categories of independent, artisan, and experimental perfume from across the globe, chosen for perfumes released in 2017. 

The fifth annual Art and Olfaction Awards events will take place in a public ceremony at The Tabernacle. Continuing the tradition of holding the awards in unique locations in different perfume capitals of the world, the Tabernacle is a Grade II-listed building in Powis Square, Notting Hill, west London, England, built in 1887 as a church and converted into an arts center in the 1970s.  

Each Art and Olfaction Award winner will receive The Golden Pear, which continues to cement its status as a prestigious achievement in the perfume world.

As with past years, our panel of esteemed judges includes luminaries from the perfume and art worlds. The members of the Art and Olfaction Awards 2018 jury include:  Andy Tauer (Switzerland), Antonio Gardoni (Italy), Christopher Gordon (USA), Grant Osborne (UK), Harald Lubner (Germany), Josh Meyer (USA), Sarah McCartney (UK), Andreas Wilhelm (Switzerland), Bibiana Prival (USA), Dana El Masri (Canada), Dawn Spencer Hurwitz (USA), Matthias Janke (Germany), Ulrike Knöll (Germany), Spyros Drosopoulos (Netherlands), Cristiano Canali (France/Italy), Denyse Beaulieu (France), Helder Suffenplan (Germany), Jeanne Doré (France), Katie Puckrik (England), Luca Turin (Greece), Mark Behnke (USA), Ashraf Osman (Switzerland), Caro Verbeek (The Netherlands), Darin Klein (USA), Sarah Baker (England), Simon Niedenthal (Sweden)
Zoe Crosher (USA), Frederic Jacques (USA), Hall Newbegin (USA), Mandy Aftel (USA)

The Art and Olfaction Awards was founded in 2012 as an independent awards mechanism designed to celebrate innovation and excellence in artisan and independent perfume, and experimentation in scent within arts practices. The Art and Olfaction Awards are a program of The Institute for Art and Olfaction, a 501(c)3 non-profit based in Los Angeles, CA.

The Art and Olfaction Awards could not exist without the generous support of our partners at Lucky Scent / Scent Bar, Pochpac, Perfumers Apprentice, Esxence, Barrister and Mann, Aftelier Perfumes, Nez – La Revue Olfactive, Basenotes, ÇaFleureBon, AutumnSeventy, Perfumed Plume Awards. 

The Institute for Art and Olfaction is a 501(c)3 non-profit based in Los Angeles, CA. The Institute for Art and Olfaction advances public and artistic engagement with scent. We do this by initiating and supporting arts projects that utilize the medium of scent, by providing accessible and affordable education in our experimental laboratory as well as in partnership with institutions and community groups, and by celebrating excellence in independent and artisan perfumery through our yearly award mechanism, The Art and Olfaction Awards. Through these efforts, we extend the world of scent beyond its traditional boundaries of appreciation and use.



For press inquiries please contact:
Maxwell Williams, Press and Communications Officer

maxwell@artandolfaction.com - 213-271-6145

2018/03/07

ご報告 & お知らせ 2月〜5月

The Smell of Intimacy
懐かしさの香り





渋谷アツコバルーにて、展示中です。

BORO 〜記憶の布〜展
www.atsukobarouh.com

オープニングに来てくださった皆さん、ありがとうございました。ケータリングとっても美味しかった…さすがアツコバルー!



そして人生初の胡蝶蘭!



こんなにお花いただけるなんて、この仕事やっててよかったです! 



さて。ひとつ終わって、またひとつ。
次なるプランも始動しました。

■5/11(金)「嗅覚をデザインする」ラボ。渋谷 ロフトワークFablab2Fにて定期開催。



■そして9月からは「キッチンに持ち帰れる嗅覚学」をテーマに、料理と香りのワークショップ(予定)


■4月18日〜19日、ロンドンにて開催される Experimental Scent Summit にてワークショップ(決定)タイトル:Maki's Method


■遅くなりましたが去る2月14日に、アムステルダムのmediamaticで Odorama というイベントに参加しました!(オンラインです)教えた生徒たちが作品を発表してくれました!
https://smellart.blogspot.jp/2018/03/odorama-game-edition-mediamatic.html


以上。そろそろ石垣島ひきこもりを抜け出して、東京で活動する機会を増やします! よろしくおねがいします。

2018/02/14

お知らせ

(1) オランダAmsterdamの老舗メディア系インスティテューション Mediamatic にて毎月開催されている嗅覚イベントにて、私がオランダで教えたコースが紹介されます。私自身もスカイプ参加。生徒たちもプレゼンします。
日時:2018.02.14. 20:00- CET
https://www.mediamatic.net/en/page/369913/odorama-game-edition

(2) 記憶の布〜BOROの世界〜展

Textile Memories – The World of BORO

東京・渋谷で開催されるこちらの展覧会に、「なつかしさのにおい」を体験できる小作品を出品します。オープニング 3/2(金) 18:00〜

2018.03.03 Sat - 04.01 Sun 
日月 / Sun&Mon 11:00~18:00  
水木金土 / Wed-Sat 14:00~20:00 
火 定休日 / closed on Tue 

入場料/entrance fee:¥500
http://l-amusee.com/atsukobarouh/schedule/2018/0303_4583.php


2018/01/04

香り"X"の分解と再構築 - シャボン玉バージョン - (KYO-SHITSU のご報告)

先日東京のWOMBでのトークイベント「感覚のハッキング」のご報告です。

トークのあと、香りの小さなパフォーマンスをやりました。

香り"X"の分解と再構築 -シャボン玉バージョン-
DECONSTRUCTING AND RECONSTRUCTING THE SMELL "X" - SOAP BUBBLE VERSION -


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2種類の香りを、シャボン玉に乗せて、ステージの上手と下手2箇所から別々に飛ばしました。



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シャボン玉を触って、割ると、匂いが飛び出します! ふたつの香りの混ざる真ん中あたりに立つと、それらの香りが混ざり合い、香り"X"を嗅ぐことができます。

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一瞬のパフォーマンスでしたが、皆さんの顔に興奮が見られます。

主催者ラナグラムさんによる当日のトークのレポートは↓にあります。お時間ありましたらぜひご一読くださいませ。

https://www.ranagram.com/kyo-shitsu/

ラナグラムの皆様、刺激的なイベントを企画してくださいましてありがとうございました! 私自身もとても楽しみました。

嗅覚のための迷路 ver.4

外務省の機関、ジャパン・ハウス・サンパウロの依頼により、来週からサンパウロに行って来ます。展示&講演してきます。 展示するのは新作「嗅覚のための迷路 ver.4」。「お花見」がテーマです。日本人はお花見が大好きです。4月にはいちばん立派な桜の木の下で宴を催し、酒を飲...